ETロボコン東京地区大会ゴールドモデル獲得までの道のり~ゼロから始めるモデル生活~

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はじめに

2018年9月16、17日に早稲田大学西早稲田キャンパスにて開催されたETロボコン東京地区大会で、tdiのtadaima G3は、モデル部門ゴールドモデル総合準優勝(1日目)という結果を残しました。

走行については、決して満足いく結果ではありませんでしたが、モデルの評価がよかったため、東京地区大会の1日目で総合準優勝という結果を残すことができ、昨年に続き今年もチャンピオンシップ大会に出場することができることになりました!

※左から総合準優勝の表彰盾・ゴールドモデルの表彰盾・本番機として地区大会を走行したロボット

ETロボコンとは?

各種さまざまなロボットコンテストがありますが、ETロボコンは、規定のロボットをチーム独自のプログラミングで特殊なコースを走行させて、そのタイムを競うものです。2018年は全国12カ所で地区大会が開催され、各地区大会の上位チームがチャンピオンシップ大会に出場できます。総参加チームは318チームで、私たちが参加した東京地区大会プライマリー・クラスに参加したチームだけでも58チームあり、非常に規模の大きな大会です。

ETロボコン2018公式サイト

順位の算出方法として、コース走行タイム(=競技順位)はもとより、プログラミングの設計(=モデル評価)自体も、同等に評価されることが特徴です。ETロボコンで上位になるためには、この「競技順位」と「モデル評価」両方で、高評価を得る必要があります。

tdiの今までの成績は以下のようになります。

tdiのETロボコン東京地区大会実績(2014~2018年)
  出場チーム

モデル評価

(C-からAの8段階評価)

競技順位 総合順位
2014年 31 C- 18位 30位
2015年 51 C+ 34位 34位
2016年 56 B 34位 20位
2017年 58 B+ 2位 1位
2018年 58 A 6位 2位

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モデルでの、過去最高評価はB+で、A-以上の評価を獲得しことはありませんでした。今年は、そこから2段階評価をあげ、Aをいただけました!今回は、準優勝できた大きな要因であるモデルについて、tadaima G3で主にモデルを担当していた私の視点で、モデル提出までの活動内容をお伝えします。

1.メンバー編成

tadaima G3メンバーは、2018年度新入社員から選抜された4名です。各メンバーのプログラミング経験(入社時点)と得意分野は以下の通りです。

メンバー プログラミング経験 担当 得意分野
A ☆☆ 実装 開発、設計
B ☆☆ モデル 地道または細かい作業
C モデル デザイン、シート作成
D 実装 精度上げ

※スキルレベル ☆☆☆:自宅でもプログラミングをするレベル、☆☆:学校で少し習ったレベル、☆:未経験

今年のメンバーは、各々違う方向で得意なものはありましたが、なにかに特化するというよりは、満遍なくどれもこなせるという感じでした。最初のうちは、実装班とモデル班に2対2で分かれて作業をしていました。タイトルにもある通り、モデル作成においては、全員が設計などには関わったことがなく、もちろん、UML図の作成など行った経験はほとんどありませんでした。

2.モデルシート作成スケジュール

6月末の配属から1週間は、活動環境などを整えていました。この時点では、モデルのモの字もでてきていません。私たちが、初めてモデルに触れたのは、配属されて約1週間後の7月からでした。ゼロからのスタートでしたが、スタートしてから提出までの期間は、モデルのことを考えない日は1日もないというくらいモデル一色でした。今年のモデル提出は8月22日だったので、モデル提出までの私たちの活動について時系列で取り上げていきます。

日付 7/3 7/4 7/21 7/30 8/9
流れ モデルテーマ決定
情報収集
UML図の作成 モデル相談会 モデルシート作成 モデルシート
レビュー&反映

モデルシート作成にあたっての大まかな流れとポイントとしては、上記のようになっています。

7/3~:テーマ決定と情報収集

モデルシートのテーマ(基本走行や難所など、どれについて取り上げるか)をチームで話し合いながら選択しました。テーマはどこについて取り上げてもよかったのですが、シートの書き甲斐がありそうな「シーソーを通過する」に決定しました。

テーマ決定後にはじめて行ったこととしては、規約の確認でした。私たちは、UML図を描いたことがほとんどない、ゼロの状態でした。そこから最短で戦えるようになるには、まず敵を知る必要がありました。目標や計画を設定し、そこまでの必要事項や道筋などをある程度見据える必要がありますよね。
規約には、何をどのように描く必要があり、どのようなことに注意すべきかなどが詳細に書かれています。私たちは規約を隅々まで読み、そこから、いつまでに何を終わらせるのかを決定しました。UML図やモデルシートの作成は行ったこともなかったため、それはそれは美味しそうな絵に描いた餅(計画)ができていました…。この後、何度も計画を見直したりすることになったのは、言うまでもありません。

また、ロボコン運営委員は、昨年のモデルの総評などを今年の参加者に配布しています。昨年提出されたモデルシートにはUML図における何の図が用いられていて、どのような評価だったのか。また、UML図自体の大まかな書き方など、モデルシート作成にあたっての必要事項を詳細に説明してくれています。こちらについても、昨年からモデルにおける傾向や改善すべき点などが述べられているため、確認必須です!

7/4~:UML図の作成

その後、モデルシートとしての一貫性やストーリなどはあまり考えずに、UML図の作成を行っていました。
モデルシートの全体の構成は、
・アブストラクト
・機能モデル
・構造モデル
・振る舞いモデル
・工夫点
の5つから構成されています。今年から、アブストラクトが新たに追加されました。

昨年、先輩方が指摘を受けた点に注意しながら、機能モデル→構造モデル→振る舞いモデルという流れで、それぞれのシートに必要な図(下記の7つ)の作成をしていきました。UML図の描き方などは、はじめのうちはgoogle先生に頼ったり、参考書などを読んだりして少しずつ描いていました。
・ユースケース図
・ユースケース記述
・機能定義
・アクティビティ図
・ステートマシン図
・パッケージ図
・クラス図
・シーケンス図
最初は、UML図としての正確性を向上させるために、描く→先輩からのレビュー→反映というサイクルをひたすら繰り返していました。ひとつの図を修正すると後の図も同時に修正がでてきたりするので、中々根気のいる作業でした。

7/21~:試走会のモデル相談所

試走会までレビューと反映を繰り返しながら完成度を高め、試走会中に行われるモデル相談所で、UML図として正確であるかなどを質問することができました。本当は1チーム20分のところを後ろがいなかったため、大幅に延長していただき、非常に有意義な時間となりました!モデル相談所は、ロボコンにおいてモデル審査員の方と触れ合える唯一の場になります。モデルを書く中での疑問点などを丁寧に教えていただくことができるので、ぜひ利用していきたいですね。

モデル相談所で得たものをすぐに反映し、モデルシートの作成に移りました。

7/30~:モデルシート作成

モデル審査員の方からいただいた指摘を反映し、ある程度、UML図の完成度が高まってきたので、ここでようやくシートの作成に入りました。今まで実装をメインでやっていたメンバーも合流です。クラス図やシーケンス図などが、実装でき尚且つ動作するものなのかということを念頭に置いて、チームでレビューし、上司や先輩からまたレビューをいただいたりしていました。図だけを描いてきた私たちとは違う実装寄りの視点から図に修正が入り、ここにきて一気に図としてのレベルがあがったように思います。

8/9~:モデルシートレビュー

シート作成を終えた今だからこそ思う、シート作成にあたって最も重要なことは『シートとしての一貫性です。
書いた本人が分かるのは当然ですが、モデルシートは設計書なので、ロボコンをやったことがない人にも分かるような形で書けている必要があります。これを見て設計ができるものを作成するにあたり、シート内で如何に矛盾が少なく、読んだ人に分かりやすく伝えられるかという点が大切であると思います。ここは、如何に多くの方からレビューをもらえるかで完成度が変わってくると思います。それは、たくさんの目で確認されたモデルシートの方が洗練されるため、より分かりやすいものになると考えるからです。

また読んだ人が分かりやすいという点では、レイアウトや色使いなども非常に大切だと思います。
今回作成したシートでは、何回も出てくる言葉などには色付けを行い関連付けたり、文字の配置などを1mm単位で修正したりと、神経質すぎるくらいに気を使いました。レビューをしていただくときに大切なことは、データの画面上でやるのではなく、実際に提出するものと同様の紙媒体で確認していただくということです。これは、実際に印刷した感じなどが分かるため非常に有用であったと思います。実際、私たちのモデルシートは、多くの方の力のこもったモデルシートであったと思います。

モデル提出までの道のりとしては、以上のような活動になります。

3.モデル作成における7つのポイント

色々述べてきましたが、シートの完成度を上げるポイントは以下の7つです!

(1)自分達の書きたいテーマで臨むべし
→まずモチベーションが大切であると思います。やる気がでるものを選びましょう。
(2)昨年のモデルからの反省点を押さえるべし
→毎年参加されている方は、前年度の反省点を。初参加の方は、全体の総評を確実に押さえておくべきです。
(3)昨年の優秀モデルを参考にすべし
→なによりシートの描き方や流れが分かりやすく、参考になります。
(4)規約の隅から隅まで確認すべし
→規約なくして、モデルなしです。規約に書くべきことと注意すべきことはすべて書かれています。
(5)モデル相談所を有効活用すべし
→相談所の方々はモデルのスペシャリストな方たちばっかりなので、どんどん質問し疑問点を解消しましょう。
(6)シートの見やすさに神経を注ぐべし
→見やすいシートはそれだけでプラス評価だと思います。どんなに良いシートでも見にくかったら残念ですよね。
(7)多くの方にレビューしていただくべし
→これが一番大切です。色々やってたように思いますが、作成→レビュー→反映という流れをひたすら繰り返してたことが今回の評価の要因だと考えます。

おわりに

私たちtadaima G3の東京地区大会でゴールドモデル獲得までの道のりについて、ご紹介してきました。今回は、走行というよりもモデルシートが評価された訳ですが、その中でも欠かすことができない要素が「他チームとの交流会」です。

合同試走会やモデル相談会など、多くのチームと様々な交流をしました。交流してくださった皆様には心より感謝しております。また、モデルシートを読んでレビューまたは感想をくださった方々、この方々無くして、今回の受賞は決して成し遂げられるものではなかったと思っております。重ねてお礼申し上げます。

さらに上を目指していくために、今後もこのような交流は続けていきたいと考えています。ここではご紹介し切れなかったゴールドモデル獲得の理由や他のメンバー視点でのモデルについて考えていたことなどもありますので、 「他の理由も気になる!」「一緒にロボコン勉強会/プレ試走会をしたい!」という方は、ぜひこちら(連絡先:tdi-roboconアットマークg.tdi.co.jp)までご連絡いただけると幸いです。お待ちしております。

お問い合わせ先

執筆者プロフィール

Hiyoshi Kenta
Hiyoshi Kentatdi AI・コグニティブ推進部
配属後、ロボコン担当として、ETロボコン2018東京地区大会準優勝。
現在は、Node.jsを使ったアプリやAIを使ったアプリの開発等を行っています。
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